雑感

「強い女メーカー」の騒動について思うこと

投稿日:2019年2月24日 更新日:

「強い女メーカー」の作者さんが「画像の無断使用を理由に複数のブログに損害賠償請求」を行ったということで、各所で話題になっていますね。

参考:『【炎上】無断商用利用厳禁と豪語していた「強い女メーカー」運営者、 好意的な紹介記事にも50万円請求』
https://matomame.jp/user/yonepo665/ca1e6049781fdcd5b3d1

人によって「正当な権利だからやっちゃえ派」「まずは削除依頼から始めるべき派」「引用だから問題ないよ派」「アフィリエイトは許さないよ派」などなど……
過激派から穏健派まで様々な意見が出ているようです。

私は普段は絵を描いたりメーカーのシステムを組んだりしてるんですけど、人のサービスを紹介する記事を書くこともありますので、どちらの立場も気持ちもわかるつもりです。

ただ、私がこの件で一番強く思ったのは
「強い女メーカー」が置かれているサービス自体がクリエイターさん(絵描き)の権利を守れるような仕組みになっていないのでは?
ということです。

今回の記事では、実際に同様のサービスを運営している経験から、なぜクリエイターさんの権利が守られていないと言えるのか?その理由を順番に書いていければと思います。

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1.その利用規約は有効なの?


まず今回の件では、作者の方が相手方に対し「規約違反」「著作権侵害」を理由に損害賠償請求を行っています。

そのうちの一つ、利用規約が有効であると認められるためには
「ユーザが利用規約に同意したこと」が証明できないといけません。

たとえば、ソフトウェアのインストールの時などに

「利用規約に同意してインストール」

の様なメッセージが出るのを見たことはないでしょうか?

なぜこんなことをしているかと言いますと、もし仮に利用規約を守らないユーザさんが現れた時「このユーザさんは利用規約を読み同意していたにもかかわらず、それを守らなかった」と証明するためです。
最悪の場合は相手方に「利用規約なんて見たことも聞いたこともないし、同意もしていません。」と開き直られてしまうわけです……

利用規約が有効になるには、ある程度条件が必要です。
わかりにくい場所においてある利用規約は、無効とされる可能性があります。

■サイト利用規約が契約条件に組み込まれないであろう場合
ウェブサイト中の目立たない場所にサイト利用規約が掲載されているだけで、ウェブサイトの利用につきサイト利用規約への同意クリックも要求されていない場合
参考:https://www.tca.or.jp/topics/pdf/ichijoho/web.riyoukiyaku.pdf

現状サイトを見る限りでは遊ぶだけならユーザ登録は不要で、サービス利用規約についてもそんなにわかりやすい場所にあるわけでもありません。
また、利用規約の同意を促すことも特にされていないようですので、何か問題が起きた時にクリエイターさんが利用規約違反を追及することは難しい気がします。
ただクリエイターさんが各々でオリジナルの利用規約をTOPの説明欄に記載することは可能なので、自衛は可能です(現に「強い女メーカー」の作者さんは、独自の規約を説明欄に追記されています)。

2.「商用利用の定義」って?


今回の騒動を受けて、「商用利用の定義」がサービス利用規約に組みこまれていました。この変更により、今後はアフィリエイトサイトへの掲載=「商用利用」として扱われることになったようです。

ただ、実際に話し合いをする際にはユーザがアクセスした時点の利用規約が適用されるものと考えられますので、今回の件で当事者の方々が示談交渉など行われる場合は改訂前の利用規約を元にして話し合いが進むことになるかと思います。

※もし後出しで規約を付け足すことが認められるなら、裁判を見越して相手方が不利になるような条文を好きなように加筆修正することが可能になってしまいます。

この辺りの定義については曖昧にしておいたほうが運営する分には都合がいいのが実情ですけれど、きちんと取り決めておいた方が良さそうに感じます。

3.作者の利益はゼロ


「50万円は法外」だと言う人もいれば、「50万円は妥当、絵を描くコストを安く思わないで」と言う人もいます。
これは個人の価値観の問題で、いくらに設定しても本人の自由ですので私はいいと思います。
少額訴訟制度※の利用という面もあるかもしれません。。

※少額訴訟制度
わざわざ裁判に持ち込むには、時間の面や費用の面で見合わず、結局、泣き寝入りせざるをえなくなる。そこで、海外の簡便な訴訟制度(Small claims court)をモデルとして、少額の金銭のトラブルに限り、個人が自分で手続きを行える様に配慮し、訴訟費用を抑え、迅速に審理を行う制度として1998年(平成10年)に設けられた。
引用:wikipedia

ただ、結局提示した金額が本当にもらえるかどうかで言うと、かなり微妙な気はします。
なぜなら、その金額を提示した根拠が見当たらないからです。

誤解がないように言います。私は「強い女メーカー」に価値が無いと言っているわけではありません。むしろその価値は50万円なんて余裕で超えていると思ってます
あれほど多くの人に遊ばれ、莫大なアクセスと支持を得たメーカーです。仮にご自身でサービスを立ち上げられていれば、初月の広告収益は100万円を超えていたかと思います。(ただし、広告の最適化を自分で行ったり、サーバ費用などの諸経費を持つ手間はかかりますけれども)

しかし、損害額の算定のためには「当人が本来得られるはずだった利益」を「相手の行動が原因で利益をどれだけ損失したか」という因果関係を証明しないといけません。

「当人が本来得られるはずだった利益」については、「強い女メーカー」が設置されているサービスはYouTubeやLINEスタンプのように視聴回数に応じて収益が還元されるようなシステムは今のところありません。そのため、「強い女メーカー」が何百万人という多くの人に遊ばれたとしても作者さんがメーカー作成によって得られたお金はおそらくゼロだと思います

一方、後者の「相手の行動が原因で利益をどれだけ損失したか」については、一個人のブログ記事なので影響力はさほどないと思います
ライセンス料を請求するとしても、使用されている期間が短いので雀の涙と思います。
勝手に使われて悔しいというお気持ちはお察ししますけれど……。

余談:訴訟はメリットが少ない


裁判をやることはまずないと思いますけれど、インターネット上での交渉がまとまらず、それでも自分の考えを通したいと思うなら次は訴訟するしかありません。
しかしそのためには相手が誰かを特定する必要があります(住所とか名前とか)。

個人情報を特定するためには数回の開示請求(裁判)手続きを踏む必要があり、さらに費用は基本的に訴える側(被害者側)が持つことになります
依頼される弁護士の方にもよりますけど、相場から考えると数十万円はかかるでしょう。

・さらに相手がTorなどで通信の匿名化を行っている場合は特定自体難しくなります。
・頑張って相手を特定しても、おそらく和解勧告で終わります。
・そうして得た賠償金も示談金も、踏み倒されたらほぼ終わりです(民事での損害賠償請求拒否には罰則がありません)。

以上から、やはり交渉段階で相手方にライセンス契約を結ばせるかどうかがポイントになってくるかと思いますけれど、これはある程度法律の知識があればまず話には乗ってこないでしょう。
となると必然的に大手メディアや有名人は避けることとなります。その結果、そのような意図が無いにもかかわらず、あたかも法律に明るくない人だけを狙い撃っているように見えてしまいます。
現に、今回のケースはネット上ではスラップ訴訟※のようだと言われているみたいですし、正当な権利を主張するためとはいえクリエイターさんに悪評が立って逆に損害を被る可能性が高いです

※スラップ訴訟
訴訟の形態の一つで、社会的にみて「比較強者」(社会的地位の高い政治家、大企業および役員など)が、社会的にみて「比較弱者」(社会的地位の低い個人・市民・被害者など、公の場での発言や政府・自治体などへの対応を求める行動が起こせない者)を相手取り、恫喝・発言封じなどの威圧的、恫喝的あるいは報復的な目的で起こすものをいう。(引用:wikipedia)

ちなみに著作権侵害の刑事罰について言及されている方もよく見かけますが、この規模の事件では警察や検察はなかなか動いてくれないと思います。
クリエイターさんの気持ちを考えると悲しいですけど……。

余談:自分で作ればいいじゃない


じゃあ結局どうすればいいのって話なんですけれど、私の個人的意見としては「弁護士費用を開発費に回して自分でサービスを立ち上げた方が良い」です。

基本的に、絵やデザインというものは何か(シナリオ/プログラム/モノ等)と組み合わせないと商品価値を生み出しにくいです。
特にデジタルイラストは描く人が多く需要に対して供給が多いですし、データはいくらでも複製可能です。

今回のケースのように他人が作ったプラットフォームに置いてしまえば、イラスト提供側が報酬を求めたり、権利を主張するのは難しくなります。
むしろ、流行れば流行るほど「こんなに流行ってるのに自分は何ももらえないし、逆に他人のお金儲けに利用される状況だけが増えていく」と複雑な気持ちになっていくんじゃないでしょうか。

そうした気持ちを「趣味でやったことだから」と割り切れないのであれば、最初から自分で全部作る、もしくは仲間を探してサービスを立ち上げるという方法をおすすめしたいです。
どのような形で提供するにせよ基本的に自分がやりたいようにできます

この方法は一見敷居が高そうですけど、実はWEBサービスを利用して自分ひとりでアイテム登録等の作業をするのとそこまで手間は変わらないような気がします。むしろ、プログラマと分業しデザインに専念できる状況を作った方が楽な気がします。

あと自分でサービス作るのって楽しいですし。
ドメインも自分でつけられますよ。例えば「tuyoi-onna.com」とか、かっこよくないです?

作る方法はいっぱいあります。
有名なところを紹介します。

キャラクターなんとか機を使う

昔ながらの着せ替えアプリです。(無料)
データセットを差し替えれば自分だけの着せ替えアプリを作ることが出来ます。
http://khmix.sakura.ne.jp/download.shtml

きつねどうさんのソースを使う

HTMLの知識だけでアイコンメーカーを作ることが出来ます。(無料)
http://furrytail.sakura.ne.jp/ext/iconmaker/

着せ替えゲームのスターターキットを買う

Unityアセットストアでは基本的な機能がそろったスターターキットが20ドルで売っています。
これをもとにUnityで開発すればマルチプラットフォームで配信できます。(残念ながらあまり評判は良くないです…)
https://assetstore.unity.com/packages/templates/dress-up-game-starter-kit-40383
envatoでも色々売ってます。
海外サイトなので多少の英語読解力が必要になるかもしれません。
https://codecanyon.net/search/dress%20up%20game

その他

プログラマの知り合いを探す

おわりに

ユーザ投稿型のサービスでは、コンテンツを作るクリエイターの権利が守られるような仕組みがあってほしいですね。
でもインターネットはあまり権利権利でガチガチに縛られていない、言論の自由が許されてる感じであるほうが個人的には好きです。

ちなみに、弊社が運営しているキャラクターメーカー「CHARAT」は誰でも自由に紹介してもらって大丈夫です!
むしろ広めてもらえると嬉しいです!

 

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